90歳、一人暮らし、認知症と診断されてから特別養護老人ホームに住み替えるまで

公開日:2021年9月30日|更新日:2021年11月9日

歳を重ねると誰でも、思うように身体が動かなくなるものです。そこで気にかかることの一つが、離れて暮らす親のこと。「いつまでも一人暮らしが続けられるのだろうか……」。
少しずつ進む状態変化や、急な病気にかかったりして本人がそのままの家で暮らすことに自信がもてなくなったり、家族による介護が困難なために、住まいを変える必要が出てくる可能性があります。
そこで、本記事では25年間一人暮らしをしていた高齢女性が、85歳を超えたころから様々な変化が起こり、90歳になって特別養護老人ホームに住み替えることになった過程を紹介します。
お話を伺ったのは、女性と離れて暮らす姪御さんです。

離れて暮らす高齢の親との付き合い方、加齢にともなう生活自立度の変化など、老後の住まいを考える上で参考にしてみてください。

目次

60歳から25年は問題なかった一人暮らし

女性は、60歳で夫と死別してから同じマンションで長くひとり暮らしをしていました。子どもがいなかったため、離れたところに暮らす姪御さんが1か月半~2か月に1度の頻度で様子を見に訪問していました。姪御さんが叔母にあたる女性の自宅を訪問した際は、家の中の簡単な掃除をしたり、季節に合わせて衣替えをしたり、普段はできない買い物の手伝いをしていました。マンションに住み込みの管理人がいて、外出時や見かけたときには挨拶をしていることや、長く暮らしていることもあって同じマンションの中に立ち話をする間柄の人もいるので、孤独にはならず、ご本人も住み慣れたコミュニティの中で安心した暮らしを送っておられました。

85歳を超えた頃から徐々に変化が現れ、離れて暮らす姪の心配は増加

女性は元気に暮らしていましたが、80代半ばより、体力の衰えや生活の変化が少しずつ現れてきました。85歳で帯状疱疹にかかり、その後の体調が元通りには回復しなかったこと、同じ頃に近所に暮らしていた実姉が亡くなり心細い気持ちが増したことが重なり、女性は日々の不安を口にすることが増えました。

姪御さんとしても、離れて暮らす85歳の叔母がずっとひとり暮らしを続けるつもりなのか気になるようになりました。引っ越して自分と一緒に暮らすか、このままひとりで暮らすか希望を尋ねたところ、叔母さんは「90歳を超えても自分でできるのであればこのまま自宅で暮らしていきたい」と言ったので、姪御さんは叔母さんを尋ねるたびに管理人やご近所にも挨拶をして、訪問を1~1か月半のペースにして様子を見に行くこととしました。

87歳で認知症の診断を受けつつも、89歳までは自宅暮らしを継続

姪御さんは、叔母さんに頻繁に会いに行けない分、電話で様子を把握するようにしていました。
87歳の頃から、同じ話を繰り返したり、楽しんでいた習い事を億劫がっている様子があることに違和感を持ち、「もしかして認知症、いやまさか」と思いながら、90歳近い年齢のこともあり、ひとまず叔母さんの様子を見に行くことにしました。家の中をみてみたところ大きな変化は見つからなかったものの、お薬カレンダーに飲めていない薬が残っていたり、冷蔵庫に賞味期限切れの食品が入っていたり、同じものがいくつも買ってあったり、常温保存するような野菜がお菓子などの他のものと一緒に買い物袋のまま冷蔵庫に押し込まれていることに気付きました。これまでと違う行動が増えていることから、姪御さんは認知症の疑いを強くし、病院の精神科の受診が必要と判断し、診断の結果、叔母さんにアルツハイマー型認知症があることがわかりました。

日常生活に不便が出ていることがわかったので、地域包括支援センターに相談し要介護認定を申請し、「要介護3」の認定を受けました。幸い足腰は丈夫なものの、姪御さんとしては、叔母さんがひとり暮らしだとどうしてもひとりで過ごす時間ばかりになってしまうことに不安を感じ、週3回のデイサービスと毎日の服薬支援のための訪問看護サービスを受けることにました。

また、冷蔵庫の食品の管理がうまくできていないということは、栄養のある食事ができていないことも考えられたので、ケアマネジャーの勧めで弁当の配食サービスの利用も始めました。見守りサービスのある配食サービスを利用したので、食事の食べ残しなど変わったことがあれば、姪御さんに連絡が入るようになりました。

姪御さんにとっては、叔母さんが必要な薬をきちんと飲めるようになったこと、きちんと食事ができるようになったことに加えて、デイサービスに行くことや訪問看護師さんが家に入ることを嫌がらなかったことは大きな安心となったようです。

90才で、在宅生活の限界から住み替えを決意

そうやって2年ほどは、「自宅に暮らし続けたい」というご本人の意思に沿って、何事もなく暮らせていたのですが、90歳を目前にしたある夏の暑い日に家の中でぐったりしているところを訪問看護師さんによって発見されました。どうやら冷房を付けようとしたところ、リモコンの使い方を誤り、暖房をつけてしまった結果、脱水症状を起こしていたようです。急いで救急車を呼び手当てを受けたあと、ケアマネジャーの判断で緊急対応としてショートステイの利用となりました。

その後、幸い熱中症の症状からは回復したものの、やはり認知症の症状が進行していること、また、叔母さん自身も自分が90歳に近いことでひとり暮らしの不安と心細さがあるということで納得してショートステイを利用していた同じ法人の特別養護老人ホームに入居することを決めました。

この事例では、その時の状況に応じてケアマネジャーと相談して介護保険サービスを活用することで適切に対応はできていたのですが、突然の健康上の問題により、自宅で暮らすことができなくなりました。
姪御さんは叔母さんの90歳という年齢を考えて、叔母さんが残りの人生を安心して暮らせるような高齢者向けの住まいを早く探していれば、脱水症状を起こすことも、急に住まいを変えさせてしまうようなこともなかったかもしれないと振り返っています。

離れて暮らす親のことが心配な方へ

この女性の事例では、85歳を超えてから身体機能の低下が顕著になったり、87歳頃から認知症の症状が出現したことを、姪御さんが定期的に訪問していたことで日々の暮らしのなかから気付くことができ、同時に担当のケアマネジャーと相談しながら介護保険サービスを組み合わせて利用することで、90歳までは本人の希望通り在宅での生活を維持することができました。離れて暮らす高齢の親族の生活を支えるためには、加齢に伴う変化が生じているかどうかを早めに気付くことができるかがポイントになります。そのためには、電話だけではわからないことも多いので、できるだけ自分の目で見ることも重要になります。


帰省した際に考えてほしいことがらについては離れて暮らす高齢の親の様子が心配~帰省するあなたが親の変化に気付くポイント」をご参照ください。

小川まどかさん PROFILE
博士(老年学)
インタビュー記事(STOP!ヒートショックプロジェクトHP)はこちら
北海道大学大学院工学研究院特任助教、東京都健康長寿医療センター研究所プロジェクト研究員を経て、2021年よりフリーランスとして活動。
高齢者のヒートショック予防に関する研究や、認知症をもつ方も安心して地域で過ごしていくための地域支援プロジェクト、複数の大規模健康長寿研究に参画した経験から、高齢期に安心して暮らし続けられる住まいとまちづくりについて、講演、テレビ、ラジオ、雑誌、WEBメディアなどで精力的に発信している。
専門は老年学、高齢者心理学

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