離れて暮らす高齢の親の様子が心配~帰省するあなたが親の変化に気付くポイント

公開日:2021年8月5日

今年の夏こそは実家に帰省し、しばらく会えなかった高齢の両親の様子をみておこうという人は多いでしょう※1。
コロナ禍という時節柄、帰省先で外出は控えたいので皆で近況を話しながら家でのんびり過ごしていると、もしかすると親の言動や振る舞いに何か違和感があることに気付くかもしれません。高齢になった親の今後の生活のことで特に気になるのは認知機能の低下、いわゆる「もの忘れ」「認知症」ではないでしょうか。

※1 本記事執筆時点において、地域によっては新型コロナウイルス感染症拡大防止のため緊急事態宣言が発出されています。また、県をまたぐ移動を控えるよう求められています

目次

85歳以上にもなれば、認知機能の低下に伴う暮らしの限界が出てくる可能性がある

日常の多くを過ごす家での暮らしのなかで現れる認知機能の低下のサインとして、例えば、高齢の親御さんのこんな変化に気付くことはありませんか?
・収納や食器棚、クローゼットの中が定位置に置かれていない、明らかに違うものが入っているなど整理整頓がこれまで通りになっていない、あるいは、しまい忘れや置き忘れがある。
・火にかけていた鍋のことを忘れて焦がしたような気配がある。
・以前よりも料理の献立数が減って、料理に時間がかかるようになった。
・指定の日にゴミ出しができていないような気配がある。

せっかくの帰省なので、手間のかかる整理を手伝おうと親に声をかけて一緒にあれこれ片付け始めても、どうも他のことに気が向いて集中力が続かないような様子があれば、もしかすると認知機能の低下の兆しと思っても良いかもしれません。

収納の整理や片付けが難しくなっているのかなと思ったら、なぜそのようになっているのか、いったん収納を観察してご自分で考えてみてください。その収納は全体が見渡しやすくなっていますか?それとも、物を押し込んだら「見えなく」なるようなものですか?年を重ねるほどに物は増えがちなこともあるので、自然に定位置が目に入るような全体を見渡せるような収納にリフォームすることを親御さんと相談するのも一案です。

また、台所も日常生活には欠かせない場所です。長く使い慣れたキッチンは手放しがたいものです。だからといって、加齢とともに嗅覚が低下し焦げた臭いに気付きにくくなったり、注意力が低下している高齢者にとって、古いキッチンをいつまでも使い続けることはリスクがあります。そこで、鍋焦がしやスイッチオフのし忘れといった「もしものリスク」を減らすために、温度を感知して自動的にオフにできるシステムキッチンへの交換はいかがでしょうか。火事の心配がなくなれば、そこで暮らす高齢の親御さんにとっても、子どもであるあなた自身にとっても安心感につながることでしょう。

高齢の親の家をリフォームするときに気を付けたいこと

ただし、親御さんが暮らす家に手を入れることにおいては、気を付けてほしいことが2つあります。

ひとつめは、これまでと様子が違うことを、すぐに認知症とつなげないで欲しいということです。

老化というのは誰にも避けることができないことで、ここで取り上げた認知機能の低下も同じです。認知症はある日突然発症するものではありませんし、いきなり何もかも忘れたりできなくなったりするわけではありません。


脳の中では、ずっと前から少しずつ変化が起き始めていて、あなたは帰省中に、生活のなかで気付きやすい困難として表面化したものをとらえたばかりです。高齢の親のことが心配になるあまりにすぐに騒ぎ立ててしまわないようにしてください。特にもの忘れは、本人が最も気付いていることです。自尊心を傷つけるようなことにならないように、まずは気にかけていることが伝わるように、できることから始めるようにしましょう。

また、地域には、高齢者の暮らしのことを相談するための地域包括支援センターがあります。こういった情報を事前に集めておくと、今後の役に立つはずです。


ふたつめは、リフォームを検討する場合には、その家に暮らす親御さんの意向をしっかりと聞くことが大切だということです。

必要な、また適切な情報を親御さんに伝え、一緒に考えていくようにしましょう。ものの使いやすさを押し付けるのではなく、その家に暮らす本人の希望を優先しながら、最適な選択ができることが望ましいでしょう。

東京都健康長寿医療センターが平成28-29年度に実施した事業「認知症とともに暮らせる社会に向けた地域ケアモデル事業」※2では、高齢者の日常生活支援のニーズには、①家事支援、②権利擁護支援、③私的領域支援、④社会参加支援、⑤受療支援の5つの領域があることを示しています。これらの支援ニーズは、認知機能の低下がある人は、ない人よりも高いことが示されています。特に「自分の体調が悪い時に看病してほしい」「自分の安否確認をしてほしい」などといった私的領域に関しては、支援が必要になる前からの信頼関係とコミュニケーションの必要性が指摘されています。いくら家族であっても、ニーズの内容によっては踏み込むタイミングや本人の意向の確認などは怠らないようにすることが、その後も続くであろう人間関係にとって重要となるでしょう。

現状では、認知機能が低下し、認知症の症状があったとしても、大半は在宅で生活している人がほとんどです。認知症を持つまで長生きできる人が増えたということが、大事にしてきた家での暮らしを脅かすことがあってはならないはずです。認知機能の低下による症状への対応と同時に、認知機能が低下していても暮らしやすい家の環境を準備することが大事なことです。ご本人の意向に配慮しながら、高齢になっても住み慣れた家で安全な暮らしができるよう片付けや収納を見直し、早めに手を打つことは在宅生活を継続する助けになるはずです。

※2東京都福祉保健局とうきょう認知症ナビ
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/zaishien/ninchishou_navi/torikumi/jigyou/caremodel/index.html(2021.7.19アクセス)

小川まどかさん PROFILE
博士(老年学)
インタビュー記事(STOP!ヒートショックプロジェクトHP)はこちら
北海道大学大学院工学研究院特任助教、東京都健康長寿医療センター研究所プロジェクト研究員を経て、2021年よりフリーランスとして活動。
高齢者のヒートショック予防に関する研究や、認知症をもつ方も安心して地域で過ごしていくための地域支援プロジェクト、複数の大規模健康長寿研究に参画した経験から、高齢期に安心して暮らし続けられる住まいとまちづくりについて、講演、テレビ、ラジオ、雑誌、WEBメディアなどで精力的に発信している。
専門は老年学、高齢者心理学

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