サービス付き高齢者向け住宅に入居する場合、どのくらいの費用が必要になるのでしょうか。この記事では実際の入居者のお話も紹介しながら、入居の費用感と気になる手続きを解説します。入居を検討している人だけでなく、老後の住まいを考え始めた人もぜひ参考にしてください。
- 目次
初期費用を抑えられるのが大きなメリット
サービス付き高齢者向け住宅は、基本的に賃貸借契約に基づく「賃貸住宅」。ほとんどの場合、初期費用として必要なのは、
・敷金(賃料の2〜3ヶ月分が一般的)
・賃料1〜2ヶ月分の先払い
・その他(仲介手数料、家財保険料など)
だけです。
有料老人ホームに比べて初期費用を抑えられる場合が多いのは大きなメリットですね。
入居にあたっては、賃貸借契約と生活支援サービス契約が基本となります。食事提供サービスや選択サービスを利用する場合の契約形態は、住宅によってさまざまです。
月々の費用はおよそ15〜30万円。住宅や利用するサービスによって変動
次に毎月のコストについて解説します。地域の家賃相場や部屋の間取り、どんなサービスを利用するかで変わってきます。
例として、さいたま市内のあるサービス付き高齢者向け住宅で、浴室やトイレを備えた28㎡の1Kタイプの部屋を借りるケースを見てみましょう(以下は月々の費用です)。
また、以前にインタビューした93歳女性のケース(こちらの記事で紹介)は、都心から電車で1時間弱の地域にある40㎡の1LDKの部屋です。
すべての費用を合わせると月に29~30万円ほどかかっているそうです。なお、この方は年金や貯蓄などにより賄っているということでした。
地域の介護サービスを受けながら暮らし続ける
サービス付き高齢者向け住宅では、介護が必要になっても、介護サービスを使いながら暮らし続けることが可能です。訪問介護などの事業者が併設されている住宅は全体の78%ですが、併設施設がなくても、地域の介護保険事業所から必要なサービスを受けられます。
介護保険のサービスは要介護度別にサービスの量の上限(支給限度額)が決まっています。この範囲内であれば、自己負担はかかった介護サービス費の1割(※一定以上の所得者の場合は2割・3割)となります。介護度に応じたサービスの量の中で、自分に必要なサービスを選択することが可能です。
サービス付き高齢者向け住宅のご入居者は、住宅の食事サービスが利用できるため、在宅の場合だと生活援助に使っていた分をリハビリに充てることもでき、結果として身体機能の向上につながるという事例もあります。
ここでは、先に紹介した93歳の要介護3の女性が、併設施設のないサービス付き高齢者向け住宅で、地域の介護サービスを利用しながら生活を継続させているケアプラン例を紹介します。
土日はご家族が訪問することを前提に、平日は毎日訪問介護が入るようにプランを組んでいます。ご本人とご家族が納得いくまで、ケアマネージャーと何度も話し合いを重ねたそうです。ケアプランはリハビリを中心に組み立てており、週2回の訪問リハビリと、リハビリ特化型の通所介護を利用することで、93歳にして要介護度が改善したことは前述のインタビュー記事で紹介した通りです。
転居にともなう「住所地特例」手続き
サービス付き高齢者向け住宅への入居を機にご家族との「近居」を始めるなど、それまでとは別の市区町村に引っ越しをする人もいます。そこで知っておきたいのは、「介護保険」や「後期高齢者医療制度」に関する「住所地特例」の手続きです。
介護保険では介護サービスを受けるには、住民票のある市区町村に介護保険料を支払い、介護保険給付を受けることが原則です。しかしこれを徹底すると、有料老人ホームなどの施設の多い市区町村に財政負担が集中してしまいます。
住所地特例は、移転先の市区町村の財政負担を軽減するために設けられている制度です。これにより、住民票を移した後も入居前に住んでいた自治体にそれまでと同じ保険料を払い続け、保険給付も同じように受け取ることができるのです。
2015年4月より、サービス付き高齢者向け住宅も住所地特例の対象となりました。たいていのサービス付き高齢者向け住宅は特例の対象です。入居を検討する住宅に確認することをおすすめします。
A市で在宅の介護サービスを受けていた人が、B市のサービス付き高齢者向け住宅に転居する場合は、A市を転出する際に要介護認定が記載された「受給資格証明書」を受け取り、転入日から14日以内にB市の介護保険担当窓口に提出します。A市で認定された要介護度は引き継がれます。
手続きの詳細は現在担当のケアマネージャーさんに相談をしてください。実際に申請した方によれば「介護保険証や負担割合証の取得にはそれなりに時間がかかり、入居後も1〜2回ほど旧住所地の役所と新住所地の役所に足を運ぶ必要があった」ということ。
申請をしないと介護保険給付が受けられなくなるので注意しましょう。
なお、住所地特例は後期高齢者医療制度にもあります。同制度の対象である75歳以上の人は、こちらも確認してみてください。
生活自立度を高めるためのサービス利用がポイント
サービス付き高齢者向け住宅は、自立して生活を送っている人から要介護認定を受けている人まで、幅広い状態の人を受け入れる制度です。入居することで、住宅内外のサービスを使いながら生活を続けることができます。介護が必要になった場合、住宅に併設の介護事業所がなくても、地域の介護サービスを組み合わせて利用することが可能です。
今回紹介した入居者さまのご家族は「90代であっても、その先の状態を見通して状態悪化を防げるか。サービスを選ぶにあたっては、介護を受けることよりも、いかに本人の生活自立度を向上させるかを考えました。本人のためになるサービスを選択することが大切です」と話してくださいました。
自立している人が虚弱になるのを防いだり、要支援・要介護の人の状態悪化を避けるなど、入居者の心身状態を改善する取り組みを行う住宅を紹介した記事もありますので、ぜひお役立てください。
地域の介護保険サービスと住宅が提供する生活支援サービスで介護が必要な人の暮らしを支えるサービス付き高齢者向け住宅の暮らしにご興味がある方は、
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